庄野潤三の思い出

庄野潤三の思い出
庄野潤三さんというと、私には懐かしい存在だった。

それが今週、小学6年生と中学受験の過去問を読んでいると、庄野潤三の「夕べの雲」が出てきた。

私が学生の頃は「第三の新人」が大流行りで、遠藤周作、吉行淳之介、阿川弘之、そして庄野潤三さんなどを読んだ。
そして遠藤周作 「キリスト教」吉行淳之介 「 娼婦   」阿川弘之 「海軍 」とそれぞれお得意分野があった。
ところが、庄野潤三さんの守備範囲は「家庭」なのだ。
家庭内での、何でもない描写があり、山も谷もなくて、唐突に終わる。 どの小説を読んでも同じようなもので、まぁ、自然に遠ざかっていった。
もう十年も前になるか、ある女子中学生の夏休みの作文を添削した。
「おばあちゃんの家でまったり過ごした…」といきなり出だした。
祖母の話を聞いて…  とか、祖母を手伝って…
なら作文も書けるが、マッタリしてしまったら、広がって行かない!
はたして、祖母と孫娘の、夏の日の穏やかな午後の様子が書いてあった。 無論、オチはない。
その時に、どこかで読んだな、既視感を覚えた。  庄野さんの作品を思い出したのだ。 中学生の作文を、大作家、庄野潤三さんに例えるのも、甚だ失礼だが、同じ匂いがした。
「良いですね」と作文を返却した。 
庄野さんが亡くなって10年ほどだが、まだ、ファンの方は多い。  作品も出版され続けている。
「ゆったり、まったり、リラックス」な作風に共感があるのだろう。
私も帰宅して、庄野さんの作品を読み直して、いまさら、また納得した。
「いい作品だね」
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