景清 ( かげきよ ) は平家の武将。
平家の殿様たちが源氏に滅ぼされた後も生き残り、平家の再興と源氏へのリベンジを狙う。
頼朝暗殺失敗後、捕えられ源氏支配の世の中など見たくないと、自分の目玉を潰すほど。
景清は超有名人で能、謡曲、文楽、歌舞伎など多くで取り上げられている。
日本人は「弱いもの好き」なので勝った源氏より、滅んだ平家がお気に入りだ。
「弱いものひいき」と言うと、源氏どうしでも、判官贔屓 (ほうがん びいき )と言うことばがある。
権力者の兄、源頼朝 (よりとも )に自害させられた、弟、九郎判官義経 (くろう ほうがん よしつね )のほうが兄より人気者なのだ。
高貴な生まれ 、そのうえ外見もかっこいい、性格もいい、それなのに虐められたり、不運続きー 悲劇である、だが ( だから )お客は感動する。
このシチュエーションはオペラでもよくあり西洋ではお約束だ。
昔々、アリストテレスさんが詩学 と言う本で演劇を
1.良い主人公が幸福になる。
2.良い主人公が不幸になる。
3.悪い主人公が幸福になる。
4.悪い主人公が不幸になる。
に類型化して、2のパターンの悲劇が観客を最も感動させ、観客の現実生活のつらさを癒す働きがあると論じたからだ。
まして、源氏と平家では、滅んだ平家への同情が強い。
中学二年の教科書で平家物語が少々でてくるが、現代語訳ででも通読していると古典芸能の楽しみが深まるはずだ。
…さて、劇場を出るともう真っ暗である。
鴨川のほとりには電線にとまるスズメのように、カップルが一定間隔ですわっている。
草むらからは虫の音が聞こえてくる。秋なのだ。
若き日を思い出しつつ名残惜しく帰途についた。