先生、叱られる!

先生、叱られる!

この間の、同窓会の準備で、先生は叱られてしまった。

10月8日月曜日は、体育の日で祝日だった。

高校の同窓会の準備だ。

布引のANAクラウンプラザに、三ノ宮から、トボトボと歩いて行った。

秋晴れの、鰯雲。

トボトボには、わけがあって、お正月のS先生喜寿のお祝いの時「手伝ってくれ」と言われながら、三連続で準備会に出席できなかった。

「申し訳無いなあ」という思いである。

それぞれ、風邪、仕事、とか理由はあるが、忙しいのは誰でもだ。

それに今回は、準備会長のXから、スライドショーを頼まれていたのだが「11月の同窓会やから、10月になってから、やろか〜」と思っていた。

ところが、10月に入ってすぐにXから電話があって「もう、スライドショー、ええで!」

「エっ!」
「俺がもう作ったから!」

いきなり、役立たず攻撃された。 しかしわたしも人生を経たジジイだから、そんなことには動じずに、サラッと返す。

「申し訳ない、X先生も忙しいのに、ありがとう」

実際、現在、Xは県立高校の校長である。 多忙だろう、しかし、結婚式などのスライドショーだって、前日に徹夜して作ることが多い。

おもだった人には、前日に前乗りで来ていただいて、持参頂いたお写真を複写したり、インタビューしてまとめるものだろう。

資料集めや、インタビューしにあちこちに行くのも、大層な事だし、わざわざ訪問される相手だって、迷惑だろう。

そのスライドショーの試写を会場でやるから、見に来い、という事である。

是非とも行って「スゴイ、スゴイ!」を連発せねばならぬ。

セピア色の写真を次々と、15分にわたって、見せられた。

「素晴らしい!問題ないよ!ありがとう」
付け加えて、わたしは、控えめに、BGMがやや「暗いのちゃうん?」と述べた。

アメイジンググレースとジュピターがそれであった。平原綾香さんひとりで15分は荷が重い。

わたしは、キャンディーズやピンクレディも、少し入れてはどうか、と提出した。

70年代には欠かせない存在だ。

キャンディーズは1975年「年下の男の子」でデビュー、78年解散。

ピンクレディは76年「ペッパー警部」でデビュー、78年まで8枚曲、1400万枚を売上。まさに同時代といえるのだが…。

「そんなのは、二次会でエエやろ!」
元日本サッカーユース代表でもある校長は、一蹴した。

「〜部のキャプテン誰やった?」写真にうつるかつての友人の名前がでてこぬようだ。

その場の誰もが覚えていなかった。

X校長の頭の中は、パワーポイントの空白を埋める作業で一杯だ。

試写会のあとは、お疲れ様会で、食事に行った。

三ノ宮までのタクシーの車中、ワーワー言って、運転手さんにも「喧しい!」一喝された。

校長はその祝日も朝から、高校に出勤で、空腹だ。「串カツが食べたい」とおっしゃる。コレステロール値は大丈夫かな?

女性4人、男性4人の8人になっていた。

駅の北の小さな串カツ屋に入る。

ここではまた、校長が指導なさる。「みんな一種類づつ、食べたいの、言えや」それぞれが、レンコン、アスパラ、などという。

最後に校長が「ここは出汁巻の串カツが美味いんや」注文する「8種類づつ8人やから、ハッパ64本!」

みんな還暦前である、夜8時だ。いいのか?

ビールの中ジョッキが安い。190円だ。 それぞれ4、5杯、飲んだ。 わたしもまあまあ、よく食べるし、飲む方だ。

しかし、8人全員が落伍者なしに「みんな健康に恵まれて、よかったな」、完食した。

ひとりが抜けて、7人で「ワインを飲みたい」と、二件目。

その店も安くて美味しい。ワイン1本、千円くらいだ。 クラフトビールもあって、珍しい。

また4、5杯飲んでしまった。

「迎えに来てもらおう」X校長の奥様は同じ高校出身で、12歳年下である。 Xは自慢である。

私も以前のバイトの後輩が、奥さまの友達で、お二人がお付き合いしていた時からよく聞いている。

二人のお子さんも、同じ高校出身である「俺が家族で一番アホやわ!」

X校長がこう自慢できるのも、上手くいっているからだ。

それぞれ、みんな元気でなによりだ、感謝せねばなるまい。

だが、ここに居ない人もいる。 幾人かが思い出された。ひとりになった帰りの車内で、ペットボトルのお茶で献杯した。